藤崎八旛宮秋季例大祭は、もともとは放生会に由来する祭りです。熊本県には放生会に由来する祭りが少なくありませんが、現在の藤崎八旛宮秋季例大祭に放生会の雰囲気を感じ取ることはできません。祭りのメインは、「隋兵(ずいびょう)行列」です。これは、加藤清正が文禄・慶長の朝鮮
飾り馬って?掛け声は?
出兵の際に無事に帰還できたことを神前に感謝して、兵100名を引き連れて神さまに供奉したのが起こりと伝えられています。随兵行列を彩る馬は、「飾り馬」と呼ばれます。飾り馬は、本来は神職の乗馬で、神職と同じ数の12頭が奉納されていたのが始めの姿です。現在は、参加団体が自由に奉
納できるようになり、頭数に決まりはありません。ここ数年は、60頭以上が奉納されています。藤崎八旛宮の周辺に露店が出ますが、ひしめくというほどの数ではありません。もともと藤崎八旛宮の周辺には出店が常にあるので、普段より少し増えているといった感じです。藤崎八旛宮秋季例大
祭の一番の味わいは、随兵行列です。お祭りは実は5日間にわたって行われ、最大の賑わいを見せるのが、藤崎八旛宮秋季例大祭は例年9月の第3月曜日(敬老の日)正午頃、敬老の日となります。2019年は9月12日から16日の敬老の日、ということになります。5日間の最初の日は、総代や三役が
清めを受けます。2日目には奉納献茶祭が行われます。3日目には、奉納武道と奉納舞踊があります。ただし、一般には公開されず、熊本県人でも詳細には様子を知りません。4日目に飾り馬が奉納されます。最終日に行われるのが神幸行列で、この行列が熊本市の中心街を練り歩きます。一般に公
開されるのが神幸行列で、最終日が休日に当てられることもあり、賑わいを見せます。非常に賑わうのは正午前後から午後3時くらいまでですが、実は神幸行列は午前6時に出発します。熊本市民は、神幸行列の出発の合図で当日は目を覚まします。勢いの良いラッパの音が静かな繁華街に鳴り響き
ます。飾り馬に付き従う勢子も、威勢良く掛け声をかけます。20年ほど前までは「ボシタ」という掛け声でした。加藤清正の朝鮮出兵にちなんだ祭りだからです。しかし、在日韓国人団体から「不快である」との抗議を受けて、掛け声を変えました。現在は「ドーカイ、ドーカイ」という掛け声
になっています。掛け声が変化した当初は、熊本県人から「意味不明」との声が上がり不評でしたが、現在では馴染んでいます。ラッパの音色が時に哀愁を帯びて聞こえるのが、藤崎八旛宮秋季例大祭の神幸行列の魅力です。熊本市は、この祭りが終わると、急に朝晩が涼しくなります。そうし
た季節の変わり目に行われるという感傷に浸れるラッパの音色です。藤崎八旛宮秋季例大祭は、「馬の虐待に過ぎない」「暴力的な祭りだからやめるべきだ」との声が上がりました。たしかに馬の扱いが酷いと熊本県人でも感じる団体があります。飾り馬になった馬は気性が荒くなり、その後、
使い物にならないという話も聞かれます。ただし、馬の扱いについては、随時、祭りに参加する団体に対して啓発活動が行われています。参加団体は、企業や高校の同窓会です。熊本県では、高校で人生の大きな進路が決まってしまうため、大学よりも高校ごとの集まりが盛んです。藤崎八旛宮
秋季例大祭への参加も、熊本県で「四高」と呼ばれる進学校が中心になり、次第に多くの高校の同窓会が参加するようになりました。高校によっては、500人も参加することがあります。そうなると、高校時代とは別の実力比べが始まってしまい、「馬をどれだけ派手に動かすか?」に注意を集
中してしまう団体もあるようです。そうした団体は、勢子の装いも不必要にけばけばしく、随兵としてのマナーもなっていません。勢子と馬の動きには関連性があるので、そうした観点からもチェックできます。
アクセスは?
会場は、藤崎八旛宮の所在地は熊本市中央区井川淵町3-1
お問い合わせは、096-343-1543
藤崎八旛宮秋季例大祭は、熊本市の中心街を飾り馬が練り歩く祭りです。藤崎宮周辺だけでなく、熊本市の中心街ならどこでも見られます。ただし、熊本駅周辺では見られません。熊本市の構造は、九州の他の県庁所在地と少々異なります。九州の他の県庁所在地は、主要駅の周辺が繁華街に
なっているケースが少なくありません。熊本市の場合は、中心街は熊本駅から市電で15分ほど移動した「水道町」周辺です。そこに熊本城があるのが熊本市の特徴です。熊本城が熊本市の中心で、熊本市の場合、熊本城から見て北を北区、南を南区、東を東区、西を西区と分けています。水道町
周辺は、神幸行列の行われる日は規制されます。そのため、市電やバスは迂回したり、本数を大幅に減らします。熊本城周辺の道路は、車の乗り入れが規制されるエリアが多いので、その年の詳細な情報は、事前に藤崎八旛宮秋季例大祭のホームページで確認する必要があります。
まとめ
藤崎八旛宮秋季例大祭は、2018年にテレビで「動物虐待の野蛮な祭り」として報じられました。「中止すべき!」という声がネット上に溢れかえりました。しかし、熊本市民にとって、藤崎八旛宮秋季例大祭は、一年の節目を感じさせる大切な祭りです。繁華街を人と馬が一体になって練り歩く
祭りは全国的にも珍しいものです。勢子のラッパには独特のリズムがあり、時に哀愁を帯びて聞こえます。祭りの参加団体のマナーや動物愛護の精神には改善を早急に求めなければならない点がありますが、「野蛮な祭りだからやめろ」と直線的に結論を出すのではなく、街中で人と馬が一緒
に動く様子を、ぜひ味わっていただきたいと思います。現在の藤崎八旛宮秋季例大祭は熊本の街と一体のものです。熊本城を中心として構成されている熊本市の街並みも一緒に堪能してほしいと思います。画像はイメージです。