南阿蘇村の「谷人たちの美術館」は、毎年10月上旬の2週間、「村全体が美術館」というキャッチコピーで行われる文化祭です。阿蘇らしい大まかさが持ち味の祭りで、熊本放送局が毎年紹介します。その運営委員になっている人が、知り合いの娘さんで、熊本地震があった直後とその翌年、応援
アーティストと交流できる?
の気持ちで参加しました。南郷谷にあった長陽村、久木野村、白水村が合併して南阿蘇村になってから、旧三村の交流を深め、南阿蘇村として盛り上げようということから、村的には若いモンに該当する40~50歳代の村在住の芸術家たちが集まり、企画した祭りです。 それぞれの人の自宅や工房
を登録し、文化祭の期間中、各所を回ってもらうというイベントです。南阿蘇村在住の芸術家とのふれあいも、文化祭の目的の一つで、作品制作の意図を聞いたり、新たな注文をしたりできます。会場が村全体となるため、参加工房を一括して紹介する場所を、旧久木野村にある道の駅「あそ望
の郷くぎの」に置いています。「あそ望の郷くぎの」は、南阿蘇村で一番大きな総合型リゾート施設です。文化祭期間以外でも、村外からの団体客がバスに乗ってやってきます。レストランや喫茶店、売店が立ち並び、阿蘇の五岳を望みながら、芝生で遊ぶことが出来る場所です。熊本地震が
あった年の10月3日に知り合いの娘さんが出品している会場を訪れました。震災による損壊を免れた作品が展示されており、果物皿を1枚買いました。緑色が印象的な小皿で、気に入って普段使いにしています。その時は、本人はまだ二次避難所で生活しており、当日は友人という芸術家の工房を借
りていました。本人には会えませんでしたが、メッセージを託しました。「谷人たちの美術館」は、工房めぐりを体験するというのがメインのイベントです。普段、作品しか知らない、芸術家の制作現場に自ら足を運んで、制作者と話をすることで、芸術を身近に感じるというのが、この文化
祭の特徴です。広大な南阿蘇村は、旧三村ごとに景観を変えます。山里的な雰囲気が濃厚なのが旧長陽村です。「あそ望の郷くぎの」がある旧久木野村は、比較的新しい住人が多く、阿蘇五岳は一番綺麗に見えます。旧白水村は、水源が非常に多く、随所で湧き水に出会えます。そのような地区
ごとの違いを実感できるイベントでもあります。文化祭期間中はサイクリングの借り出しもあります。秋の気配が感じられるようになった南郷谷を、自転車で巡るのは爽快な気分になれます。南阿蘇村めぐりは、自動車が一番手っ取り早い方法ですが、オススメの方法は自転車です。山里的な
雰囲気が濃厚な旧長陽村の工房も、自転車がきつく感じられる急な坂道の上にあるところは稀です。また、熊本地震により、そのような急な坂道の上の工房は、大きな被害が出て、現在は作品制作が行われていませんし、取り壊された工房も少なくありません。旧久木野村と旧白水村は、比較的
道がなだらかなので、自転車で十分移動が可能です。文化祭が行われるのは、毎年10月1日から10月14日までの2週間です。熊本市ではまだ秋の気配が微妙な時期ですが、南阿蘇村では、早い田んぼではそろそろ稲が黄色く色づいてきています。彼岸花も咲いています。彼岸花は田んぼの縁に植
えられるのが普通なので、赤い花に縁取られた黄色がかった田んぼは、まさしく田舎らしい趣を感じさせる眺めです。自転車で支障なく移動できる道なら、随所に食べ物屋があります。蕎麦、あか牛、田楽などの店が多いのが南阿蘇村です。そうした食べ物屋に立ち寄るのも、文化祭期間中の楽
しみです。文化祭期間中は、スタンプラリーに参加している店が多くあります。スタンプラリーは南阿蘇村の企画観光課が行なっています。画像はイメージです。
アクセスは?入場料は?
南阿蘇村の表示がなされている家
お問い合わせは、080-6409-7003
南阿蘇村の日常に入り込んでもらうという企画なので、特別なバスの運行や臨時駐車場の設置はありません。作品を展示している工房は、200メートル以上離れたところからでも一見して分かる大きな幕を家の屋根にかけたり、のぼりを立てたりしています。その幕やのぼりが目印です。各工房は、10月1日から14日までは、午前10時から午後4時まで無休で対応してくれます。予約は不要です。工房への入場は無料です。
まとめ
南阿蘇村の「谷人たちの美術館」は、南阿蘇らしい大まかさが生かされた文化祭です。2週間という長期間、毎日6時間いつでもOKというスタイル、村内随所に点在する工房、いずれも、都会的な発想では「ありえない」大まかさですが、それが南阿蘇村の人間の無理のない発想です。村内に在住
する芸術家の工房を覗き見し、普段接する機会のない芸術家と直接ふれあい、気に入った作品についてその制作意図を尋ねるというのが、イベントの趣旨です。文化祭が行われる10月上旬は、南阿蘇村が秋色を徐々に深めていく時期です。稲刈りはまだ先ですが、そろそろ黄色く色づきだした田
んぼがあり、その周りを赤い彼岸花が縁取っています。地区によっては湧き水がそばにあります。南阿蘇村名物の蕎麦やあか牛などを食べながら、南阿蘇村めぐりを楽しむのも、イベントのもう一つの楽しみ方です。